01:夏休みの宿題

高校生にもなって自由研究の宿題を出されるとは。多分、先生も何を課題に出せば良いのかわからなかったのだろう。全く生徒に課題を丸投げするとは酷い先生だ。
自由研究といえば小学生の頃ワクワクしながら調べたものだったけれど、現在高校生のあたしはただ面倒に感じるだけだった。
正直何を課題にするべきか思い付かなかったので、あたしは友達のに相談をした。はあたしよりも先に自由研究の課題を見つけていたらしく(ちなみにそれは飼い犬の観察らしい……って、それこそ小学生じゃん?!)、あたしにアドバイスをくれた。





この町って忍者の学校があったっていう話でしょ?だから、町の歴史でも調べてみたら?





というわけで今あたしは図書館の【町の歴史コーナー】に来ているわけなんだけど……。

「こっちだこっち!」
「待ってよ〜」
「お前が鬼だからな!!」
「きゃーっ!」

日焼けした子供ばかりがここには集まっている。部活帰りの高校生であるあたしはかなり目立ってしまって恥ずかしい…!あちこち走り回っている子供たちはどうやら鬼ごっこの真っ最中みたい。子供は外で遊ぶべきなんじゃないのかな?まぁ、図書館の方が涼しいし広いし快適だよね。その気持ちは良くわかるんだけど、図書館では静かにっていうママの教えを知らないのかしら?
だいたいこの町の歴史コーナーは、義務教育を受けている子供たちの夏休みの自由研究用に即席で作られた感じのコーナーだ。手作りの折り紙で作られたアサガオがお誕生日会のように飾り付けられている。当然置いてある本も子供向けの絵本で、忍者の歴史を紹介している。
この町は忍者の学校があったということで有名だ。現代風に言うならスパイ集団の学校。忍者が使っていたという手裏剣やら苦無などの武器が多数出土している。それに関する書物も多く残されている。
日本文化好きな外国人には忍者マニアが多く、外国人向けの観光地としても発展している。しかし実際地元の人々は忍者について詳しい人はほとんどいない。何というか、地元からすると忍者という存在は昔からここいらに伝わっているせいで、珍しくも何ともないから誰も調べようとしないのだろう。灯台もと暗し?というわけでやっぱり自由研究のテーマには打って付けなのかもしれない。

「お前今ズルしただろー?!」
「してないもーん」
「早く逃げろー!今度はこっちが鬼だぞ〜〜」

あたしは溜め息を吐きながら絵本を閉じた。うるさくてたまらない。あたしは今読んでいた絵本を持って新聞などが置いてある雑誌コーナーへ移動した。こっちには経済新聞ばかりが置いてあるせいか、子供が影も形も見えない。
ふかふかのソファに座り、あたしは再び絵本を開いた。
この絵本のタイトルは【裏切り者の伊作】。この忍者の町では有名な忍者は2人おり、その内の1人だ。
1番人気のあるのは【変装名人の三郎】という絵本にもなっている鉢屋三郎という忍者で、彼はどんな人間にもあっという間に変装できたらしい。しかも伝説によれば、彼は忍者の学校で同じクラスだった不破雷蔵という男に顔を借りて生活をしていたため、三郎の素顔は誰も知らなかったという。そして今でも三郎の素顔は今の世にも伝わっていない。
個性的な性格と謎が多いせいか、子供には大人気の鉢屋三郎。今あたしが持っている絵本の主人公である善法寺伊作とは大違いだ。
【裏切り者の伊作】とは善法寺伊作という忍者のことだ。三郎が忍者のヒーローなら、伊作は味方の忍者を裏切った悪者。伊作もまた歴史的にも有名な人物だけれど、あまり良い意味では登場しない。
この絵本では、伊作が外からやってきた悪者と一緒に悪だくみをして、結局は伊作が学校の忍者に成敗されて終わる。子供向けに作られているとはいえ、後味は良くない内容だ。
あたしはこの善法寺伊作を自由研究のテーマに選ぶことにした。
普通なら変装名人でヒーロー扱いをされている鉢屋三郎を選ぶところだろう。あたしにもそれはわかっている。だけど、伊作という人物がどうしてそこまで悪者扱いされてしまうのかが理解できないのだ。
忍者は闇に生きる者。現代では忍者という職業は美化されているみたいだが、実際にやっていたことは暗殺だったり密告だったりと、実に汚いことばかりだ。伊作が仲間を裏切ったことなんて、そのことに比べても別に大したことないんじゃないかと思う。
さらに、伊作は三郎とは違った意味の謎が残されている。伝わっている話によると、伊作は室町時代当時、ある村で大量殺人を犯した人物と手を組み忍術学園を裏切ったという。
ふと顔を上げると、図書館の館長さんが傍に立っていた。長いヒゲが良く似合う、まるで絵本から抜け出たような容姿のおじいさんだった。

「昨日電話をくれた学生さんだね?」
「あ、はい。と言います」

昨日、絵本の元となった文献がこの図書館に保管されていたので見せてもらえるか電話をしたのだ。
館長さんはあたしを図書館のカウンターの奥へと案内してくれた。破れて修復中の本や紙芝居が積み上げられている棚を通り、廊下の突き当たりに倉庫らしい金属の扉がある。【風土資料室】という白いプレートが貼られていた。
ひんやりとした、クーラー以外の冷たい空気を肌に感じてぶるっと震えた。

「少し寒かったかい?」
「いえ、大丈夫です」
「悪いね。本の保管のために温度管理してあるんだよ」

館長さんは鍵を回すと扉を開けてくれた。中は昼間だというのに薄暗く、パチッという音と共に電気が点いた。照らし出された室内は資料と思われる本が所狭しと本棚に収納されていて、紙の独特の匂いが充満している。

「ここで待っていてくれるかい?今資料を持ってくるからね」
「はい。ありがとうございます」

狭い室内にどうにか設けられているスペースの椅子に腰かけるよう促された。もし、今地震が起きたらあたしも館長さんも本に押しつぶされてしまうことだろう。
しばらくして、館長さんは皺だらけの手に茶色く色が変色した箱を乗せてきた。A4サイズくらいの箱をテーブルに置くと、そっと箱を開ける。そこには古ぼけた一冊の本が仕舞われていた。穴が開けられ紐を通しただけという、現代の本と比べてかなりアナログな造りになっている。表紙に達筆な字が書かれているのだが、ミミズがのたくったようにしか見えない。館長さんは文字をなぞりながら言った。

「これは、室町時代に書かれた善法寺伊作の史実を綴ったものだよ。回顧録とも言うね。昨日も電話で言ったけれど、最後の方は破られているせいで伊作が最後にどうなったのかはわかっていないんだ。現代語訳も一緒に保管してあるからね。読んでみると良い」
「はい、ありがとうございます」

さっそくあたしは古びた本を取り出し、1枚ページをめくってみた。しかし、現代人であるあたしには、筆で書かれた文字など読めるはずもなかった。仕方なく破られているという最後の方のページをめくった。館長さんが言う通り、最後から数十枚は破り取られている。けれども、引き千切ったというよりは、丁寧に手で切り取ったような感じだ。切り口は虫食いなどとは明らかに違っていた。いったい何の目的で切り取ったのかはわからない。
しかも裏表紙には血が固まって出来た黒い痕がついている。戦争でもあったときについたのだろうか?

「これは……血ですね……」
「この辺りでも昔は戦場があったのかもしれないね」

現代語訳本を元に読み進めていくと、伊作が凶悪犯と一緒に逃走した後の話が書かれていない―――いや、その部分が破り取られているせいで、実際伊作はその後どうなったのかがわからないのだ。

「作者はわからないんですか?」
「それもわかっていないんだ。忍者が書いたという説が有力だよ。しかし、忍者は自分を隠して生きる者だ」
「自分たちの情報を普通は残さない。それなのに、どうしてこんな本を書いたんでしょうね……」
「そうだね。この史実自体、残さなくても良いという考え方もあっただろうに」

調べれば調べるほど、善法寺伊作に関する情報は謎を深めていった。
忍術学園は忍者の学校であったが、忍術を教える以外普通の学校と変わらず人間関係も良かったとされている。それなのに、善法寺伊作は村人を皆殺しにした凶悪犯と手を組んだ。そしてその後はどうなったのかがわかっていない。けれども今の世にまで悪名が伝わっている。
伊作がどうなったのかについて調べている学者もいるようだけれど、全て仮説にしか過ぎない。
誰も知らない。誰も知ろうとしない。だから、興味が湧いた。















乗り気じゃなかったあたしはどこへ行ってしまったんだろう?興味が出てきたらとことんのめり込むタイプらしい。
あたしは資料を見せてもらった後、新聞コーナーのソファに凭れ掛った。少し長い前髪が視界に入ってくる。

「でも……、どうしよう?」

せっかくやる気が出て来たというのに、善法寺伊作についてこれ以上詳しいことはわからなかった。
忍者とは自分を多く語らないらしい。忍者の文献自体もそこまで多く存在するわけではない。彼については、図書館に保管されているあの文献ただ1つ。

「このままだと小学生レベルで終ってしまうなぁ……」

高く白い天井を見上げていると、パタパタと複数の軽い足音が館内に響いてきた。視線を正面に戻すと、先ほど町の歴史コーナーで鬼ごっこをしていた子供たちがいた。もう帰るらしく、何人かは手に本を抱えていた。
三つ網の女の子が、前を走っている帽子を被った男の子に追いつこうと駆けて来た。

「早く来いよ!」
「待ってよ〜っ!……きゃぁっ?!」

あたしの目の前で女の子は足を縺れさせてしまい、両手に抱えていた大きな図鑑を前に投げ出してしまった。

「うわぁ?!」

女の子は前のめりになって倒れそうに傾き、図鑑は、勢いをつけて振り返った男の子の顔面目掛けて宙を飛ぶ。男の子は咄嗟に自分の顔を庇おうと腕を動かすが、間に合わない。
あたしは気付くと立ち上がり両手が前に出ていた。そして、ここが図書館であるということも忘れて思い切り叫んだ。

止まれっ!

掌全体に熱が集まってくるのを感じる。あたしの声と一緒になって掌に集まった見えない何かが放出された。
ピキン、というガラスにヒビが入る様な高い音が館内に響く。同時に床に倒れそうになっていた女の子と飛び出した図鑑が柔らかな光に包まれ、空中でピタリと静止した。完全な静止状態で、女の子の髪の毛の一本も動いていない。目も見開いたままで、驚いた顔のまま止まっている。まるでカメラで撮った写真を見せられているかのようだ。
帽子を被った男の子は何が何だかわかっていないようで、他の子供たちと一緒にポカンと口を開けて見ている。いや、キミたちには遣ってないよ?
あたしは翳していた手をゆっくりと下げる。すると、あたしの手の動きに合わせて空中で静止したままの女の子と図鑑が床に着地した。着地し終えた女の子は再び瞬きをし始め、呼吸も再開する。きょとんとした顔であたしのことを見上げた。

「あれ?わたしどうしちゃったの……?」
「えっとね―――」
「お姉ちゃん魔法遣いなんだね!」
「すごい!魔法遣いの人初めて見た!」

あたしが説明をする前に、子供たちはあたしが魔法遣いであることに気付いたようだ。キラキラと眩しい笑顔を、まるで向日葵のように咲かせた。
この世界には、日常の中に魔法が存在している。火を生みだしたり、重い物を遠い国まで一瞬で運べたり、個人差はあるが魔法遣いたちは一般人には持ちえない特殊な力がある。別にさっきのあたしみたいに何が言葉を発することで魔法を発動させているわけではない。空気を吸うのと同じように魔法は自由に遣うことができる。
魔法遣いは国によって監視され、18歳までに魔法の研修を受けて国から免許(正式名は魔法労務士免許)を取らなければ法律違反となって逮捕される場合がある。公務員の職種として、魔法局と呼ばれる部署まである。また、個人で依頼を受ける魔法事務所も存在している。そこまで珍しいわけではないけれど、魔法を遣える人たちは遣えない人たちよりも少ないため、魔法は目立つ存在だ。
あたしの得意魔法は【時間】だ。さっき女の子を助けたみたいに、時間を止めたり遅くしたり早めたりすることができる。しかも、ほんの僅かな間だけ。それ以外の魔法は全くと言って良いほど遣えない。こういう遣える魔法に偏りがある魔法遣いのことを、【特定行動魔法労務士】と呼ぶ。まぁ、あたしは免許をまだ持っていない未成年なため、正式な魔法士ではないけれど。





ん…?待てよ?





時間……





魔法……





室町時代……





「―――そうだ!」
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「え?ああ、何でもないよ。今度からは気をつけてね。それと、図書館で鬼ごっこはもうしないこと!」
「「「はーいっ!」」」

子供たちはあたしにちょこんと頭を下げて図書館を出て行った。
いや、そうじゃない。
あたしは夏休みの宿題を―――裏切り者の伊作についてもっと詳しく調べる方法を思い付いた。
あたしの得意な魔法は時間を操ること。ようするに、善法寺伊作がいる時代に時間を戻せば良い。この町は、善法寺伊作が所属していた忍術学園はあった場所なのだから。
けれども、それにはかなり大規模な魔法を遣わないといけない。プロでも何でもないただの女子高生であるあたしには、そこまで大きな魔法を遣うことは到底不可能だ。いくら未成年とはいえ、そんな大きな魔法を遣えば罪に問われる可能性が高い。
でも、もっと知りたい。
どうする? どうしよう? どうしようか?
既にあたしの心は決まっていた。














痛い!!止めて!!





お願い……!殺さないで……!





何でもします!だから……、嫌!痛い……!





止めて……。殺さないで……。














灰色の暗雲から冷たく激しい雨が降っていた。昨日より雨の勢いは弱まっているが、肩を打つ雨は蓑腰にでも冷たさが伝わり、徐々に体温を男から奪っていった。
忍び装束の男はまだ15歳の少年であった。けれども森の中を凝らして目標を探しているその目は、幼さを抑えこむ忍の目をしていた。
木の枝に立ち、手を太くゴツゴツとした幹に手を当てる。笠を被り、顔を半分覆っていた頭巾を外して静かに深く息を吸い込んだ。雨の湿った独特の匂いが肺に満ちてくる。空気に晒された少年の顔は幼さの抜けないものだった。高いところで1つに束ねられた癖のある柔らかそうな髪は、すっかり水分を含んで重くなってしまった。
視界には鬱蒼と茂る森の深緑が、少年の探し物を余計に見付けにくくさせている。特にこんな酷い雨の中では、更に視界は悪い。雲の中にいるかのような濃い霧が森を包んでいるのだ。

(できるだけ早く戻る必要があるな……)

体温を奪っていく雨からできるだけ早く遠ざからなければならない。普段保健委員長を務めている彼ならば、尚のこと学園に戻って休養を取りたいところだ。そして何より学園で帰りを待っている友人たちに早く会いたい。
少年は再び顔を覆い隠すと木から飛び降りた。ぬかるんだ地面には木の葉が大量に落ちている。強風で散ってしまったのだろう。
足元から立ち上がる霧の中で、雨粒が目に入らないように手を翳しながら走った。こういった視界の悪いところも走り慣れている。6年間忍術を学んできている彼にとっては、これも実習の1つでしかない。
なるべく雨の中でも足音を殺しながら前へと進む。
時折地面から剥き出しになっている石も避けて、少し木々の開けた場所に辿り着いたそのときだ。少年の顔が強張った。
土が泥に変化した地に、泥と同じ色に染まった布が落ちている。それは人を包んでいるいるようで、小柄な人間ほどの膨らみがわかった。そして僅かに胸の辺りが上下しているように見える。この人物はまだ生きているのだ。

(これか……)

少年は慎重にボロボロの麻布に近づいた。雨を大量に含んだそれは、色が黒ずんでしまっている。どうやら相当衰弱しているようで、少年がかなり至近距離にまで近づいても気づく素振りが無い。
少年は蓑の下、背中に隠していた小太刀をすらっと引き抜いた。雨に濡れて刃が艶やかに怪しい光を放っている。幾人も、この小太刀は血を吸ってきた。
眼つきが鋭く、しかし余計な感情を伝えてこない忍へと変わっていく。少年は片膝をつき、小太刀の刃を布に包まった人間の首筋辺りを目掛けて構えた。

(せめて苦しまないように……)

すっと小太刀の柄を持つ手を上げ、振り下ろそうとしたとき、強い風が少年に吹き付けた。まるで迫る凶器を振り払うかのようである。
するとずぶ濡れの布の下から僅かに手と足が顔を出す。少年は小太刀を握る手の力が僅かに抜けた。
手首、足首は少年が想像していたよりも細くて華奢だ。細かな擦り傷が目立つ。彼の知っての通りなら、この手足はまだ大人になりかかった子供。
少年は驚いて小太刀をその場に投げ捨てると、濡れて重くなった麻布を一気に剥ぎ取った。バサッという布の擦れる音がして水溜りに落ちた。泥が跳ねて飛び散る。

「っ?!」

布の下から出て来たのは、予想もしない姿だった。
泥に汚れた全身は、丸みのある柔らかな女性の曲線を描いている。





布の下にいたのは、少年と同じくらいの年頃の少女だったのだ。





そして、雨の中でも漂ってくる血の臭い。
少年の髪よりも赤みが差した髪が濡れて広がっており、頬にも張り付いている。固く閉じられた目は窪んで真っ黒な隈ができてしまっており、目の直ぐ上には横に走る切り傷があった。
仰向けの少女の唇は紫色に染まってガタガタと震え、端からは血が流れ出ていた。それにいくつもの引っ掻き傷が赤い線を作っている。
華奢な腕や足には血の気の無い肌には無数の打撲痕が見て取れた。紫色の大輪の花のように咲いた内出血に、少年は顔を顰める。左腕は特に赤黒く腫れ上がり、通常の2倍ほどの大きさにまでなっている。確実に骨折だろう。
露出している膝小僧は黒く汚れ、そこからも赤い色が見えた。
全身に暴力を振るわれた痕跡が惜し気も無く晒された少女。意識は無いようで、ただ苦しそうに顔を歪めながら眠っている。
特徴は怪我だけではなかった。少女はこの時代には無い奇妙な服装をしているのだ。南蛮人が着ている服装ともまた異なる、丈の短い着物。胸元には赤いリボンが結ばれ、襟は紺色のセーラーだ。足元も長い足袋のようでひざ下まで覆っている。そして履物は見たことも無いつるつるとした茶色の光沢ある素材だ。
少年は心臓がバクバクと高鳴るのを感じた。一瞬自分が闇に生きる者であることも忘れて、少女をしばし呆然と見つめる。
雨の音だけが響く森。
大怪我を負った少女の濡れた頬。
やがて少年は唇をくっと締めて自分の着ていた蓑を脱いで少女を包むようにかけた。懐に入れていた布を取り出し、出血している箇所を丁寧に巻いて止血を施した。少女の肌は燃えるように熱くなっており、雨で濡れているだけではなく酷い汗もかいていた。
折れていると思われる腕には落ちていた少し太めの木の枝を添えて布を巻き、しっかりと固定をする。
周囲を確認しながら少年は蓑に包まれた少女を背負い、雨と霧の中、再び元来た道を戻る。






キミは忍者に向いていないんじゃないか?






かつて全身に包帯を巻いた忍者に言われたことを思い出し、少年は、ふ……と苦笑した。





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