平たい赤の箱の場合


学園長の庵から出た後にさっそくは箱に注目した。
が選んだ赤い箱。その蓋を取って見れば、中には謎の植物の枝が入っていた。枝には瑞々しい色の生命力を感じさせる葉が付いている。見たことがない植物には首を傾げた。

「コレって何の葉なんだろう?」

学園長曰く、コレもまたクリスマスに関係しているものらしい。
さっそくはこの植物がどういったものなのかを調べることにした。図書室を開けてもらい、いくつかの植物に関する南蛮の本を持って廊下を歩いていると、向こうから2人の人物がやって来る。それは風呂から出て夜着姿の良く知る先輩の姿であった。

「伊作先輩、留先輩」
「やあ、こんばんは」
、その本何だ?」

髪を適当に拭いながら食満はの本と箱を指差した。

「実はさっき学園長先からこの箱を頂いたんですけれど、中に植物が入ってたんです。その植物はくりすますと関係があるようなので、ちょっと調べてみようかと」
「僕にも見せてよ」
「はい、どうぞ」

は伊作の前に箱を差し出して蓋を開けた。中に入っている植物をじっと見つめて伊作もまたと同じように首を傾げる。

「確かに…見たことが無いね、この葉は。薬草というわけでもなさそうだし、毒草ってわけでもなさそうだけど」
「そうですか。やっぱり南蛮の植物なのかもしれませんね」
「調べるんだったら、オレらの部屋に来いよ。オレたちも力になれるかもしれねぇし」
「良いんですか?」
「ああ。良いよな、伊作?」
「うん、大丈夫だよ」

にこりと伊作が微笑んで了承した。
3人は忍たま長屋へ向かい、部屋に入ると行燈に火を灯した。オレンジ色の柔らかな光が部屋をぼやりと照らし出す。

ちゃんはそこに座ってね」
「あ、はい」

座布団を差し出されてはその上にちょこんと正座をした。食満は胡坐で箱から植物を取り出して眺める。伊作はと一緒になって書物に目を通した。
本に描かれている挿絵を見ていると、の目があるページで止まった。

「あっ!もしかしてコレじゃないですか?」
「どれ?」
「見つかったのか?」

伊作と食満がが開いているページを覗き込んだ。
そのページは南蛮植物の生息地やその周辺の環境が書かれているものだった。丁寧に描かれた挿絵はこの植物とそっくりである。
食満がうーんと唸る。

「【ヤドリギ】っていうのがこの植物の名前みたいだな。だけど、それ以外が良くわかんねぇ……」
「そうだね。くりすますとの関係性が書いていないみたいだ」
「でも、名前がわかれば探しやすくなりますよ」
「だな。じゃあ今度はくりすますの本でも調べるか」

食満はそう言って南蛮の事が書かれている本を手に取った。伊作もも他の本に手を伸ばしてページを捲っていく。
しばらくの間は本を捲る音だけが静かに響いたが、食満の声がその静寂を破る。

「おい、ヤドリギが書いてあるぞ」
「本当ですか?」

の顔がパッと明るくなって食満の隣に並ぶ。そして食満の手にある本を覗き込んだ。するとそのページにはヤドリギと一緒に南蛮人の男女の絵が描かれている。

「留三郎、そこページを読んであげなよ」
「ああ、わかった。『くりすますにヤドリギを高い所に飾りましょう』」

はその言葉に合わせてヤドリギを部屋の柱に括りつけてようとした。しかし、小柄なでは手が届かない。
伊作が立ち上がっての代わりにヤドリギを受け取る。

「僕がやるから」
「伊作先輩ありがとうございます」

ヤドリギを伊作はタコ糸で縛ると、柱に釘を2つ軽く打ち付けた。そこへ縛ったヤドリギを括りつけて固定する。

「何だか不思議な感じだね」

伊作の言う通りで、青い葉っぱを柱に飾るのはとても奇妙な光景だった。食満もも苦笑する。

「だけどまぁコレが異文化というものですから……」
「日本だってイワシの頭を飾るだろ?あれと同じようなもんじゃねぇの?」
「確かにね」

クスクスと伊作が笑い、和やかな雰囲気が訪れる。

「ところで、その続きは?留三郎」
「ああ、そうだったな。『クリスマスに男はヤドリギの下にいる女に―――』………ッ?!」
「留三郎?」
「先輩?」

食満は読んでいる途中で突然止まってしまった。驚愕の顔のまま頬を少々赤く染めてそのページを凝視している。

「留三郎、僕にも読ませてよ」

伊作がひょいと固まっている食満から本を取り上げて自分も目を通す。すると伊作も同じように、いや、食満以上に頬を赤く染めてしまう。恥ずかしそうに俯いてしまった。

「えっと……、先輩たちどうしたんですか?」

が不思議そうに尋ねると、食満も伊作もハッとなってを見た。の頭上には先ほど飾ったヤドリギが括りつけられている。に視線を戻した2人はごくりと唾を飲んだ。

……そんなに知りたいか?この話しの続き」
「え?まぁ…、そりゃ知りたいですよ。そのために本も借りてきたわけですし」

食満が立ち上がっての隣に並んだ。を見る食満はなぜだか緊張した面持ちをしている。いったいなぜこんな目で自分を見るのかがわからず、はきょとんとしてしまう。
スッと食満が手を伸ばしての滑々した頬に触れる。

「あのな―――」
「ちょっと待ってよ!何してるんだ留三郎!」

伊作がと食満の間に慌てて入り込むとの腕を引っ張って自分の腕の中に収めた。伊作にしては珍しく怒り顔である。キッと目を鋭くさせて目の前の食満を睨みつける。

「僕がそんなこと許すはずがないだろう?」
「何でお前の許可が必要なんだよ!」
「???」

食満も伊作も何かのことで争っているのだが、それがいったい何なのかをは知らない。

「オレが先にとキスするんだよ!」
「ぼ、僕だってちゃんキスとしたいよ!」
「きす?」
「「?!」」

今大きな声で言ってしまったことに気づいて2人はハッとなった。しかし今言ってしまったことはもう戻らない。食満も伊作もそろりとの様子を覗うように見れば、は相変わらず疑問符を頭に張り付けたままである。

「えっと…、きすって何ですか?」

はキスがいったい何かを知らないらしく、2人に問いかけている。
食満と伊作ははたとなってお互いの顔を見た。何かを心に決めたらしく軽く頷いてから伊作が口を開いた。

「実はね、この本には『クリスマスに男はヤドリギの下にいる女にキスをすると幸せになれる』って書いてあったんだよ」
「幸せになれるおまじないということですか?それは素敵ですね」

も女の子だ。おまじないというものに興味があるらしく花の様な笑顔を見せた。可愛らしいの笑顔に2人は更に頬を赤く染めてしまう。

「それで、きすっていうのは何ですか?あたしもきすをすると幸せになれるんですか?」
「オレたちは男で、お前は女だ。ヤドリギも飾ったわけだし、……キスをしてやろうか?」
「え?良いんですか?」
「僕もする!留三郎だけなんてずるいぞ」
「そうですよ、3人で幸せになりましょう!」

キスの意味も知らないままはにっこりと能天気な笑顔浮かべた。
伊作と食満はの両脇に立った。

ちゃん、目を閉じて」
「え?あ、はい、わかりました」

が長い睫毛を伏せるのを確認すると、2人は小柄なに合わせて屈んだ。ドキドキと心臓を高鳴らせて、白くて柔らかいの頬に自分の唇をそっと押し当てた。

「ふぇ?!」

頬に感じた柔らかくて温かな感触にびっくりしたが目を開けると、自分の頬に口付けをしている2人の姿が視界に入ってきた。

「あは、これがキスだよちゃん」

口付けと呼ぶにはとても幼いものだった。だが、キスが何かを知らなかったにとってはとても大きな衝撃である。か〜〜〜っと顔や首、耳まで真っ赤に真っ赤になってしまい、口付けされたところを押さえる。

「なッ、何して…ッ?!」
「だからキスだろ?キスは南蛮の言葉で口付けのことだ」

悪戯っぽくニヤッと笑う食満はを抱き寄せると、もう1度頬に口付けを落とした。益々は頬を赤くしてしまう。
伊作がムッとしてを食満から取り返した。今度は伊作の胸に納まり、も流石に混乱してくる。

「留三郎ばかりずるいよ!僕もちゃんにもっとキスしたい」
「伊作せんぱ―――んッ?!」

伊作はの顎に手を添えて桃色の唇に自分のそれを押し当てた。目を大きく見開いては硬直してしまう。すると緊張を解すかのようにの唇を優しく舐める。肩を震わせて薄く口を開いたところを伊作の熱い舌が入り込んだ。お互いの唾液が混ざり合って水音を立てる。その音が響く度にの心臓の音が速くなっていく。

「ふッ……んんっ……!」
「ん……、ちゃんの舌……、甘いね」

の逃げる舌を追いかけて自分のと絡めると、じわじわと唾液が滲んでくる。は最初こそ抵抗をしていたものの、初めての感覚に手足が痺れる様な気がして動けなくなってしまう。
伊作は愛しいの唇に触れることが出来て幸せそうに、そして恍惚とした表情に変わっていく。
だが、その幸せな時間を許さない者がいた。食満は伊作とを引き離して目くじら立てる。

「何してんだよ伊作、今度はオレだ!」
「ぷあっ?!留せんぱ―――ぅむっ!」

やっと解放されたと思えば、今度は嫉妬心に駆られた食満が瞳を閉じての唾液に濡れた唇を奪った。熱い舌が再び口腔へ侵入し、は頭がおかしくなってしまうのではないかと思った。
伊作は丁寧に愛撫をしていたが、食満はそれとは違って荒々しく息が出来ないくらい深く深く口付けをしてくる。くちゅくちゅと唾液が混ざり合って舌と一緒に溶けてしまいそうだ。
の肌が可愛らしく桃色に染まっていくのを伊作は見逃さなかった。食満に口付けをされている間、伊作は後ろから手を回しての襟元を寛げる。

「んぁ……っ伊作、せんぱ、んんっ」

慌てて声を出そうとするが、食満がその声を喉奥へと押し込んでしまう。
伊作はの襟元から中着に包まれた胸元に手を伸ばしてゆっくりと撫でていく。まだ発育途上の胸を優しく大きな手で包むと、の背筋がビクッと震えた。

ちゃんのここ、すごく柔らかいね……」
「やぁっ……!伊作先輩…ぁあんっ、やめて…、くださっ……ひゃっ」

伊作の指が乳房に柔らかく埋められていく。張りのある感触に伊作は夢中になった。胸に這う甘い痺れを感じては大きな瞳に涙の滴を滲ませていく。下から持ち上げられるように揉まれたり、指で胸を撫でられると体温がどんどん上昇して汗が滲んできた。

の首筋真っ赤だな」
「とめ、せんぱぃ…っあぁ、やぁあ……ッ」

食満は唇から離れると桃色に染まっている鎖骨付近に唇を這わせた。ここにも触れられたことが無かったは、食満が口付けをする度に小さな身体を捩る。

「んッ、痛っ?!」
、痕が付いたぞ」
「そ、そんなの付けないでくださいよぉっ、ひあぁっ?!」

赤い華を胸元に咲かせて満足そうにしている食満の耳にの短い悲鳴が響いた。の胸を見ると、中着の下で何かが蠢いている。シルエットから間違いなく人間の手―――伊作の手であることがわかった。
伊作は直接の肌に触れようと黒い中着の下に手を入れた。肌理細やかな肌の感触が気持ち良く、伊作はそのままの乳房の飾りを摘まんだのである。既に硬くなって主張していた乳首は敏感に伊作の愛撫に反応した。

「あんっ、ふあぁ……んっ!伊作、せんぱい……、そこっ触っちゃ……ぁあっ!」
「どうして?すごく可愛いよ…?」
「だってぇ……!」

伊作が親指で乳首を押し込む度には耳まで赤くなり、背中を逸らせて甘美な刺激に耐える。男の手が自分に触れていると思うだけでの心臓は強く脈打った。
一方正面で伊作の手がいやらしくの胸に這い回るところを見ていた食満は、たまらず邪魔な中着を捲り上げた。冷たい外気に晒されての肌が粟立ち、ふるりと全身を震わせた。

「きゃあっ?!食満先輩……っ見ないでぇ……!」
「そんなこと言わないでもっと見せてくれよ」

肌理細やかで汗ばんだ肌。伊作の骨ばった指がの小さな胸を歪ませて埋まっている。薄く色付いた先端はピンと張り詰めて起ち上がって震えているではないか。好いている少女のこんなあられもない姿に興奮しない男はいないだろう。

「これって、全然、あっ、……幸せとかそんなんじゃ…っ無いですよ…ぁんっ!?」

文句を言うの乳首に食満はちゅっと軽く口付ける。そうすると面白いくらいには甲高い声を上げて肩を揺らした。

「そんなことねぇよ。これからもっと幸せにしてやるから」
ちゃんは僕たちのことだけを考えて。ね?」

再び胸を刺激され、唇が這い、はもう何も考えられなくなってしまったのである。


2009.12.06 更新