
(どこで間違ってしまったんだろう?久々知の赤い糸を結んでしまったところ?糸を切ってしまったところ?それとも、この学園に編入した事自体が間違いだったの?)
普段、自分の嫌な事を全て押し殺しているような顔をしていた。幼い頃からそれが当たり前だったため、誰もがの苦しみに気付けなかった。
しかし、久々知は気付いていた。が何を隠しているかまではわからなかったが、それでも久々知はの心の痛みを知りたいと思った。そして、助けたい、と。
けれども、久々知はを助けるどころか逆に助けてもらってばかりいた。だから今、こうして腕の中ですすり泣くを助けたい。
「、教えてくれ……。どうして泣くんだ?どうしてオレが……お前を好きじゃないって思うんだ?」
「…………」
は優しく耳元で問いかける久々知に答えない。否、答えられない。喉奥が熱くなり、返事の代わりに大粒の涙が零れる。身体のあちこちに出来た傷よりも、胸の内がどうしようもなく痛い。
(あたしは、久々知を護っているつもりでいながら、自分の辛さを久々知にぶつけてしまった……)
自業自得で生み出したものだというのに。は自分の偽善者振りを笑うしかなかった。
「……もしかして、オレが姉さんを好きだと思っているのか?」
「…………」
答えずにいる。その視線の先にあるのは、久々知へと続いている赤い糸。ずっとと久々知を縛り付け、戒めている呪縛だ。今ここで解き放たなければ、お互いにダメになってしまうだろう。
(終わりにしよう)
自分がこの学園に来た本当の理由―――赤い糸が視える事、触れられる事、そして……を殺したのが他でもない自分である事を明かすため、は決意した。
唇が震え、胸が張り裂けそうになるのを堪えては口を開いた。
「あのね、久々知―――」
「まぁ無理もないか。あんなところを見せられたんだからな」
「へ?」
久々知の話の意図が読めず、思わず声が漏れた。
久々知はこあら身体を離し、再び向き合うように座り直した。しかもきっちりと正座をしている。もつられてきちんと座り直した。
久々知は真っ直ぐにこちらを見ているが、顔は真顔にも関わらず真っ赤に染まっている。その態度には首を傾げるばかりだ。
「久々知、いったいどうしたの?」
「姉さんが……最後に学園に来た日を覚えているか?」
はその問いに間を置かず頷いた。
この日の出来事を、が忘れるはずなかった。の悲劇的な死を招く切っ掛け―――が久々知との糸を切ってしまったのだから。
が頷いたのを見て、なぜか益々久々知は顔を赤くしていく。それに妙な汗を掻いているようにも見える。
「久々知……?具合が悪いなら無理しなくて良いのよ?」
「だから、そうじゃなくて……」
久々知はの顔色を窺いながらもごもごと口を動かす。
「姉さんの事……、お……お、押し倒してた、だろ……?」
語尾に近づくごとに久々知の声は小さく消えてしまいそうだった。けれどもの耳にはしっかりとその言葉は届いていた。届いていたにも関わらず、久々知に聞き返してしまった。
「え?何?何で今そんな事……?」
確かにあの日、久々知はとの情事に縺れ込んでいた。だが、なぜ今その事を久々知が持ち出してくるのかが理解出来ない。だいたい、と久々知は許嫁同士だったのだから、場所はともかく情事に発展しようが何もおかしい事など無い。
「あのとき、姉さんの事を押し倒したのは事実だ……。でも、オレは……!」
(そっか、ようするに誤解を解きたいということか)
赤い糸の力とはいえ、好きな人であるに誤解をされていては久々知も困るだろう。
「久々知、落ち着いて。あたしが言っているのは、そういう話しじゃないんだよ」
だが、久々知はに対する誤解を解きたいがあまりにの言葉は届かないらしい。
今ここで赤い糸の力について話さなければならない。これ以上久々知を振り回してはいけない。
は再び決意を新たにして口を開こうとしたのだが、それより先に久々知が言葉を吐き出した。
「今までどういうわけか忘れていたんだけれど……。、オレはあの日に……」
久々知は一度言葉を区切り、に衝撃的な事実を語り出した。
「
あの日に、姉さんと別れたんだ」
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