忍術学園に到着すると、さっそく久々知の許婚であるは客室へと通された。は、久々知に用意された座布団の上に優雅な動きで正座する。そして困ったように口元を抑えて笑った。

「毎回客間に通さなくても良いのですよ?私はあなたの身内のようなものなのですから」

すると、久々知は大げさとも思えるくらい首を横に激しく振った。少々頬を赤く染めながら、必死な目でに言う。

「確かに姉さんは……、身内、ということになりますけれど、良い部屋にお通ししたいです」
「ありがとう、兵助」

にっこりと綺麗な瞳を細めて笑うの姿に、は同じ女として眩しいものを感じた。久々知はというと、の天女のような美しい笑顔が直撃したせいもあって、ぱぁっと昼間のように明るい笑顔に変わる。

(いつもさんの隣にいるときの久々知は、真面目でお堅い感じが無くなって見えるんだよね)

い組の秀才である久々知は、何事にも真面目に取り組み、5年生ながら委員会の委員長代理も務めている。火薬倉庫の管理には、火薬に対する正しい知識と判断力が必要だ。地味な仕事ではあるが、責任を持って取り組んでいる。そんな久々知が、14歳という年相応の笑顔を見せるのはの前だけなのではないか。
の方も久々知を大切に想っていることは確かだ。そうでなければ、1人で忍術学園までの長旅をしたりはしないはず。ましてやのような美女ともなれば、山賊以外にも男は寄って来る。久々知もかなり心配なのだろうが、それ以上に自分に会いに来てくれることの方が何倍も嬉しいのだろう。

(尚さら誤解を解かないと……!)

ゆらりゆらりと揺れる、2人を結ぶ赤い糸。から感じ取った胸の痛みは、失恋の痛みだ。久々知と一緒に逢引きをしていたと誤解されているに違いない。

さんのために久々知だって腕輪を作ったんだから、あたしがしっかりしないと!)

どうやら久々知は、と自分が浮気していると勘違いしていることに気づいていない。人への気遣いは忘れない彼だが、女心はまだまだ理解しきれていないようだ。

(だけど、いつ話を切り出す?それとも、さんが動くのを待つべき?)

しかしたちよりもずっと大人だ。嫉妬したなどと言い出すはずがない。へ話を切り出す機会探し、頭の中がぐるぐるだ。
楽しそうに久々知と他愛のない話をするはハッとなった。そして、『あらいけない』と形の良い眉を寄せる。

「学園長先生にまだ御挨拶をしていませんでしたね。兵助、今日はいらっしゃるかしら?」
「あ、はい、少々お待ちください。今見て参りますので」
「だったらあたしが―――」
「良いって、オレが行くから。姉さんは前からお前と話がしたいって言っていたんだし」
「え?」
「それじゃあな」

久々知はぽかんとするを置いて静かに障子を閉じた。客室に残されたは、を相手に何をどう話すべきかを考えてしまう。

(これって誤解を解く絶好の機会じゃ……?!でも、いきなりだし……)
「ふふっ」
「?」

は再びぐるぐると考え込んだを見て、柔らかな笑顔を浮かべた。いかにもお姉さんといった、そんな表情である。

「あ……、ごめんなさい。兵助の文であなたのことを知っているのですよ。だから、どんな子なのか興味があって……」
「そう、でしたか」

は鳩が豆鉄砲を喰らったようになる。まさか久々知が、自分のことを手紙でに伝えているとは思わなかった。

(自分のことを手紙に書かれるだなんて……何か、むず痒い感じがするわ……)
「兵助は、5年生の他のお友達のことも書いていますよ。兵助と同じ委員長代理をしている竹谷さん、大雑把で迷い癖のある不破さん、不破さんの変装をしている鉢屋さんのことも、ね」
「まるで報告書みたいですね」
「そうですよね。私もそう思います。兵助は生真面目だから、何でも私に伝えてこようとするんです。食堂で出されたお豆腐のことも、毎回どんな風だったかを教えてくるんですよ」
「あははは、それはやり過ぎじゃないですか」

いくら豆腐が好きだからと言って、毎回豆腐のことを書かれては読む側としてはうんざりしてしまうだろう。
が笑うと、は目を細めてそれを見つめる。

「兵助は学園でのことを色々教えてくれます。お友達のこともそう。でも、あなたのことは特別みたいです」
「へっ?あ、あたしが、ですか?」
「ええ」

問いかけに迷いも無くこくりと頷くに対して、はどう反応するべきなのかわからなかった。を結ぶ赤い糸が、再びに痛みを伝えてくる。不安で胸がもやもやと渦巻き、締めつけられるような痛みだ。
久々知にとって自分がどう特別なのかはわからないが、それよりもまずの不安を解かなくてはならない。

さん、今日あたしと久々知が町へ言っていたのは……その、逢引きとかじゃありません」

は自分に言い聞かせる意味でも口にした。のような美しく気品もある人が許婚である久々知が、自分に振り返ることがあるなどありえない。そのことは、だって知っているはずだと思っていた。

「久々知はあなたのために贈り物がしたいと言って……、だから、あたしは付き添いで行っただけなんです」

は言葉を紡ぎながら、どうしてこんなことを必死になって弁解しているのかわかたなくなった。他人の恋愛には特に関わらないようにしてきたというのに、気付いてみれば友人の許婚に誤解をされている。冗談じゃない。
は黙って必死に説明をするに耳を傾けていた。

「あたしは、久々知のことを好きだとかそんなこと……全然思っていませんから。久々知だって、さんのことを心底慕っているはずです。だから、だから……久々知のことを信じてあげてください」

と言い切り、はチラッと恐る恐るの様子を覗った。は、先ほどと同じようにただ微笑みを浮かべている。益々焦るを見て、艶やかな紅の引かれた唇がゆっくりと動いた。

「私はあなたとお話してみたいと思っていました。だから今、こうしてあなたとお話できてとても嬉しいです」
「は、はぁ……?」
「だけど、後悔もしています」
「えっ?それは……、どういう……?」

は問いかけに答えず、寂しそうに微笑んだ。先ほどまでの大人っぽい艶めいた笑顔ではなく、まだ少女の面影が残るものだった。

(絶対に誤解が解けてない……!!)

そう確信したが口を開いたとき、同時に久々知が客室の障子を開いた。走ってきたようで息を乱している。

「遅くなりました、学園長先生は今少し席を外しています。もう少しお待ちください」
「わかりました。ありがとう、兵助」

久々知に笑いかけるの顔は既に年上の顔だった。は誤解を解くための追求がもうできなくなってしまい、久々知をじっと睨む。その不穏な視線に気づいた久々知は、びくっと肩を揺らした。

「な、何だよ」
「別に何でもない。それより、ちゃんと贈り物を渡しなさいよ。手遅れになる前にね!」
「は、はぁ?」
さん、あたしお茶を今お持ちしますね」
「ありがとう、さん」

はそう言い残し、さっさと客室を後にした。後はもう久々知に任せるしまないと判断したのである。

(久々知がこういうときは頑張れば良いのよ!あたしが頑張ったってしょうがないじゃない)

妙に腹が立ってはズカズカと廊下を歩く。食堂に辿り着くと、おばちゃんにお茶を頼んで盆へ乗せる。ついでに菓子をおばちゃんに作ってもらい、お茶と菓子の良い香りを漂わせながら再び廊下を戻る。

(久々知が腕輪を渡せば、それで済む話だわ。あたしには関係無い)

それにしても、気になるのはの方だった。





だけど、後悔もしています。





そう言って笑うは、本当に酷く儚げで辛そうに見えた。

(あんなに綺麗な赤い糸を持っているのに、あんな顔で笑わないといけないなんて……)

の言っていた意味までは理解出来なかった。けれどもは、何となく久々知との関係が、どこかおかしいところに勘ずいていた。

(とにかくあたしはこのお茶を出して、久々知に後は任せよう。あたしに出来るのはこれくらいだけだし)

そう思って、障子を開けた。

「お茶、お持ちしま―――」

の視界に飛び込んできたのは、想像もしていなかった光景だった。
畳の上に倒れこむ男女。男はが良く知る久々知。女は彼の許婚である
久々知はに覆いかぶさり、雪のように白い肌に少し筋張った手で触れている。豊かな胸元を晒して襟を乱すの瞳には涙が伝った痕が光っている。そして、胸元には赤い鬱血痕がいくつも刻まれており、誰に刻印されたのかは明白だ。細く華奢な足も、着物の合わせから大胆に肌蹴ている。長い黒髪が乱れ、2人は息を乱して頬を互いに赤く染めていた。
どう見ても、熱い情事の最中。こちらが熱気に当てられてしまうのではないかと思うほどの。
は、頭が沸騰してしまうのではないかと思った。盆に乗ったお茶と菓子がぶつかってガチャと音を立てたのを耳にしてようやく我に返る。

「お邪魔しましたっ!!!!」

やっとそれだけ言うとは障子をバン!と大きな音を立てて閉じた。

っ!」

久々知の声が客室で響く。しかし、それよりも早くは来た道を逃げるように戻った。盆を落としていないのが奇跡だろう。
客室の久々知はの上から退くと、素早く立ち上がって障子に手を掛けた。

「兵助……」
「?!」

今にも消えてしまいそうな、小さな声。久々知はハッとなって勢い良く振り返る。

「兵助」

そこには、慈愛に満ちた寂しい笑顔を向ける女がいた。















(何あれ何あれ何あれ何あれ……!?)

は盆を持ったまま、足早に廊下を抜ける。頭の中はまだ混乱状態で、ただ疑問の言葉だけが浮かんでくる。
何の前触れもなく、男女の絡み合いを見てしまった思春期真っ盛りのにとって刺激が大き過ぎた。しかも、男の方はが良く知る人物であり、あの久々知兵助だ。混乱しても無理はない。いくら許婚がいるからといって、真面目な久々知が堂々と客室であのようなことをするとは思ってもみなかった。

(確かに頑張って欲しいとは思っていたけれど、ああいう頑張りは求めていなかったからね!)

足元を見ていなかったは、何かにつっかかって転んでしまう。

「ああっ?!」

の手から放りだされた盆は廊下に落ち、当然盆に乗っていたお茶と菓子が酷い音を立てて転がった。菓子を乗せてい皿にはヒビが入り、お茶は盆の上に溢れかえる。
は前に倒れて膝を強く打ち付ける。普段なら受け身くらい取るのであるが、今回ばかりは頭がそこまで回らなかった。恰好悪く廊下に沈んでしまう。やってくる痛みには顔を顰めた。

「うう……っ、これもみんな久々知のせいだわ……っ!!」

どうやらつっかかった感触から言って、また誰かの赤い糸に引っ掛かってしまったらしい。
しかし、何か妙だ。

(変だな……、何かプツって………?!)

は嫌な予感がした。背筋が冷たくなり、鳥肌が立つ。
恐る恐る痛む上半身を起こし、自分の足元へ視線を向ける。すると、見覚えのある赤い綺麗な糸があった。そして―――

「っ?!」





糸が、真っ二つに切れてしまっていた





赤い糸は、男女の愛を結ぶ絆。
にしか視えない愛の形。
久々知との心を結びつけるもの。
それが今、切れてしまっている。
与える影響がどんなものなのかを、は知っている。

「あ、あぁあああ……っ?!」

は恐怖で頭が真っ白になった。ガタガタと手が震え、嫌な汗がじわじわと滲んでくる。
は急いでその赤い糸をくっつけようと近づけた。けれども、完全に切れてしまっている赤い糸はくっつく気配が無い。今度は結んでみようと震える手を必死に動かす。しかし、結んでも結んでもするりするりと簡単に解けてしまうのだ。きつく結んでも、結び方を変えてもそれは同じ。まるでを嘲笑うかのように、どうやっても結べない。元通りに戻すことができないのだ。

「ど、どうしよう……、あ、あ、あたし……っ!?」

血の気が引いていき廊下であたふたしていると、向こうから人の気配を感じた。この通りは生徒たちの行き来が多い場所で、ここにずっと留まるのは怪しい。は咄嗟にこの場を離れることにした。どうせにしか視えない糸だが、今のにはそこまで頭が回らなかった。
その日、頭の中はずっと切ってしまった赤い糸のことでいっぱいになってしまった。















が学園から帰ってから2日目の昼、は未だにと久々知の赤い糸について思い悩んでいた。あの日からあまり眠ることができず、目の下には酷い隈が出来てしまっていた。けれども、今は隈のことなどどうでも良い。は、自分がどれだけ大変なことをしてしまったのか理解していた。

(どうしよう……運命の糸を切ってしまうなんて、そんなこと今までしたこと無かったし……)

これまで糸につっかかって転ぶことは幾度となくあった。だが、まさか糸が切れてしまうとは思いもしなかったこと。初めての経験に戸惑うのも無理はない。今のにわかることは、確実に悪いことをしてしまったということだけだ。

「おーい、
「ひっ?!」
「何だよ、変な声出して」
「久々知……」

廊下を振り返れば、そこには少し煤汚れた久々知が立っていた。パンパンと埃を叩き落としてに近づいてくる。はサッと視線を逸らしたが、久々知の小指が気になってチラリと盗み見る。久々知の綺麗な赤い糸は、やはりこの前切ってしまった状態のままだ。キラキラと美しい朝露のような輝きは失われていないが、それでもぶっつりと途切れているのを視ることは胸が痛んだ。

「委員会終わったの?」
「ああ、ちょっと手間取ったけどな。これから昼食だろ?一緒に行かないか?」
「う……うん……」

正直は久々知のことを視界に入れたくはないが、ここで断るのもおかしいので頷いた。頷くを見て、久々知は『そうか』と満足そうに黒い瞳を細めた。

「あの、さ……」
「何だ?」
さんとは、さ、最近どう?」
「えっ?あ………」

意を決して尋ねると、久々知は少々頬を赤く染めた。その仕草に何かあったのかとの心臓はバクバクと大きな音を立てる。
久々知は、癖のある黒髪を掻きながらぼそりと言った。

「その、この前は変なところを見せて……悪かった」
「変な……?……、あっ」

久々知が言っているのはあのことなのだろう。はそれどころではなかったので、すっかり忘れていた。今思い出してもパニックになりそうだった。

(知り合いの……友達のああいうところを見てしまったのは、結構……キツいな)

いくら周りに認められている関係だからといって、友人の濡れ場を見てしまったことは精神的に苦痛を感じた。久々知もそのことを反省しているのだろう。も咎めるつもりはない。

(もう忘れてたくらいなのに、わざわざ謝るなんて久々知らしいなぁ……)

はなるべく平静を装うことにした。久々知自身が反省していることはもうわかっていることだ。

「大丈夫……気にしてないから」
「そう、か?本当に悪かったな……」
「何度も謝らないで良いし……。お互いの平和のため、無かったことにする!良いわね?」
「わ、わかった……」

の声に押され気味だが、久々知は大きく頷いた。気を取り直しては息を吸い込むと再び久々知に質問した。

「さっきも聞いたけど、さんとは仲良くしてる?」
「珍しいな、がそんなことを聞いてくるなんて。というか、お前もこの前会ったばかりじゃないか」
「それはそうだけど……気になるから」
「別に何も変わったことはないよ」
「ほ、本当に?」
「ああ」

薄く微笑みを浮かべている久々知は、確かに普段と何も変わりは無いようだ。それどころか、いつも以上にスッキリとしているような気がする。

姉さんはオレにとって大切な人だし、姉さんもオレのことを大切だと言ってくれた。そういえば、お前と選んだあの翡翠の腕輪も気に入ってもらえたよ」
「そう……良かった」
「一緒に選んでくれてありがとう。のおかげで良い贈り物が出来た」
「ううん、あたしたち友達でしょ?そんなお礼を言われるようなことじゃないし」

は心底安心している自分がいることに気づく。どうやらが心配していたことは起きていないようだ。
こんなに優しげな表情をしている久々知を、自分は引き裂いてしまうところだったと恐怖が襲ってくる。自分の力が恐ろしい。

「けれど……」
「けれど?」
「不思議だな。お前に話すときは、いつも安心する。お前はアイツらみたいにからかったりしないからかもな」
「ああ……、鉢屋とかは直ぐにからかうしね」

安心する、という言い方はおかしいのかもしれないが、恋愛の話をするとき必要以上にからかわれるのは誰でも嫌だろう。
久々知は足を止めてをじっと見降ろした。何だろうと思ってが顔を上げると、久々知はに向けていたときと優しい笑顔をに向けていた。

「久々知?」
「……いや、何でもない。それより急いだ方が良い。豆腐定食が無くなるからな!」
「あ、ちょっと待ってよ!」

急に走り出した久々知を追いかけては走った。
とにかく、久々知やの関係が崩れてしまうようなことは起きていなかった。それだけで今は十分安心出来る。もしかすると、何も起きないのかもしれないという楽観的な考えさえ浮かんできた。久々知は翡翠の腕輪も渡して、しかも相手に喜んでもらえている。何もかもが上手くいっているじゃないか。
食堂は既に昼食を求めて生徒たちでごった返していた。賑やかな食堂のカウンターに並んでいると、6年生たちが食堂に入ってきた。野外演習から返ってきたと思われる6年生たちは、それぞれ疲れた表情をしていた。

「あ〜疲れたなぁ」
「雨も途中で降ってきたからね」
「小平太、まだ髪が濡れているぞ」

仙蔵がしっとりと濡れて水滴を垂らしている小平太の髪を、持っていた手拭いで包んだ。

「先輩方、おかえりなさい」

久々知が律儀に挨拶をすると、視線が久々知に集まった。6年生たちは、それぞれ久々知に『よ!』とか『ただいま』と挨拶を返していた。もそれに合わせてぺこりと頭を下げ、カウンターに出され定食を持つ。香ばしい焼き魚の良い香りが鼻腔をくすぐり、空腹が益々強調される気がした。
久々知は先ほど宣言した通り豆腐定食を受け取ると、空いている席をきょろきょろと探した。
後ろに並んでいる6年生たちの会話が、久々知との耳を打つ。

「そういえば、裏々々山で途中崖崩れがあったよな」
「ああ……。1人、その岩に潰されてしまったと……」
「大岩だったからな。あれじゃひとたまりもない。運が悪かったとしか言いようがないな」
「しかし、あれではかろうじて女性ということしかわからないよね……」

事故死とはいえ惨い死だ。とても巨大な岩だったらしく、下敷きになった女は顔も姿も良くわからなかったらしい。岩からはみ出した着物の柄で女のものだとわかった、と。この時代、山奥まで整備されているところなど僅である。そのため、自分の身は自分で護るしかない。それでも気の毒な話だ。

さんは、裏々々山の向こうの方に住んでいるって聞いたっけ)

など考えながら呑気に構えていただったが、次の言葉に耳を疑った。

「ただ、腕だけは無事だったらしい」
「腕?そんなもん無事だって、身元がわからないだろうが?」

文次郎が疑問を投げかけると、仙蔵が答える。







その腕に、数珠状の翡翠の腕輪をしているそうだ





が何かを言う前に、久々知の豆腐定食が、ガシャンと音を立てて落ちた。


06切断