小さな光を放つ蜀台の元に2人の男が集まっていた。1人は真っ黒な直垂を纏い、上座に座っている。顔は暗くて良く見えない。そしてもう1人は、黒衣の忍装束を。背中には刀を背負っている。
「―――というわけで、忍術学園と思われる生徒の1人を見失いなした。しかし、間違いなく光陽国へと向かった模様」
忍者は恭しく跪いて頭を下げた。
パン!と音を立てて上座の男は真っ赤な扇子を広げる。蜘蛛の巣模様が禍々しい扇子だった。その扇子の向こうで男の口元が弧を描く。
「なるほど。実力はどの程度だと思いますか?」
「はっ!変装が得意らしく、部下たちも驚いていました。学園内でも成績はかなり良さそうな腕前です。あっという間に尾行に気づき、変装をして撒いたと……。申し訳ありません……!!」
「まぁ良いでしょう。やはり光陽国へ向かった護衛は、彼ら忍術学園のようですね」
「それは間違いありません、新月丸様」
「まだ見習いとはいえ、どの程度なのかを見極める必要があります。次の策を実行しなさい」
「御意!!」
深く頭を下げた忍者の組頭は、闇に溶けるように消えていった。
男―――新月丸はスッと立ち上がると、襖を開けて中庭に出た。涼しい風が吹き、新月丸の他には誰もいない静かな夜。
「ふふ……十六夜、お前もこの月を見ていますか?」
猫の爪のように細い月が夜空に浮かんでいる。その月に照らし出された新月丸の表情が露わになっていく。
「近い内に必ず……。だから、ちゃんと良い子で待っているといい」
怪しく微笑む口元には獣のような牙が見え、
切れ長の瞳は鮮血のように真っ赤だった。
第四夜 誰も護ってくれない